wizSafe Security Signal 2021年11月 観測レポート


2021年11月観測レポートサマリ

本レポートでは、2021年11月中に発生した観測情報と事案についてまとめています。

当月は1日あたりのDDoS攻撃件数に大きな変化はなく、最大規模を観測した攻撃はDNSやLDAPなどの複数プロトコルを用いたUDP Amplificationで先月を上回りました。最長時間を観測した攻撃はSYN FloodやUDP Floodなどの複数手法が使用されたもので、継続時間は先月と比較し約3.5倍に増加しました。

IPS/IDSにおいて検出したインターネットからの攻撃について、当月はSQLインジェクションが最も多く観測されています。また、当月もApache HTTP Serverの脆弱性(CVE-2021-41773及びCVE-2021-42013)を狙った攻撃が観測されています。

Webサイト閲覧時における検出では、exeファイルや難読化されたJavaScriptなどが多く観測されています。メールでは先月と同様に運送業者を騙り情報の窃取を狙ったHTMLファイルを添付したメール、情報窃取型マルウェアのAgent Teslaへの感染を狙ったメールを観測しています。また、当月は1月に活動が停止したものの、11月より活動が再開した、Emotetへの感染を狙ったメールを観測をしています。

DDoS攻撃の観測情報

本項では、IIJマネージドセキュリティサービスやバックボーンなどでIIJが対処したDDoS攻撃のうち、IIJ DDoSプロテクションサービスで検出した当月中の攻撃を取りまとめました。

攻撃の検出件数

以下に今回の対象期間で検出した、DDoS攻撃の検出件数を示します。

図-1 DDoS攻撃の検出件数(2021年11月)
図-1 DDoS攻撃の検出件数(2021年11月)

今回の対象期間で検出したDDoS攻撃の総攻撃検出件数は559件であり、1日あたりの平均件数は18.63件でした。期間中に観測された最も規模の大きな攻撃では、最大で約236万ppsのパケットによって19.61Gbpsの通信が発生しました。この攻撃は主にLDAPやDNSなど、複数のプロトコルを用いたUDP Amplificationでした。また、当月最も長く継続した攻撃は2時間42分にわたるもので、最大で488.40Mbpsの通信が発生しました。この攻撃は主にSYN FloodやUDP Floodなど、複数の手法が使用されていました。

IIJマネージドセキュリティサービスの観測情報

以下に、今回の対象期間に検出した1サイト当たりの攻撃検出件数(図-2)と攻撃種別トップ10の割合(図-3)を示します。

図-2 1サイト当たりの攻撃検出件数(2021年11月)
図-2 1サイト当たりの攻撃検出件数(2021年11月)
図-3 攻撃種別トップ10の割合(2021年11月)
図-3 攻撃種別トップ10の割合(2021年11月)

対象期間内に最も多く検出したのは、SQL Injection – Exploitで、全体の10.68%を占めていました。当該シグネチャではWebアプリケーションに対する攻撃を検出しており、その多くはブラインドSQLインジェクションでした。この攻撃手法は複数のSQLクエリに対するサーバの応答の差異を観察することで、データベースの情報を解析するものです。

次点ではThinkPHP CMS Getshell Vulnerabilityを多く観測しており、全体の7.71%を占めていました。検出した通信は、PHP用Webアプリケーション開発フレームワークであるThinkPHPの、invokeFunctionメソッドの脆弱性を狙って、リモートからのコード実行を試みるものでした。図-4は観測した通信の一部です。

図-4 ThinkPHPの脆弱性を悪用する通信
図-4 ThinkPHPの脆弱性を悪用する通信

図-4の内容は、wgetコマンドを使用して外部のサーバからIoTマルウェアであるGafgytをダウンロードし、アクセス権限の付与とファイルの実行を試みるものでした。

また、Apache HTTP Server Path Traversal Vulnerability (CVE-2021-41773)と、トップ10には含まれていませんがApache HTTP Server Path Traversal Vulnerability (CVE-2021-42013)も先月と同様に多く観測しています。これらは、Apache HTTP Server 2.4.49およびApache HTTP Server 2.4.50に存在するパストラバーサルの脆弱性を狙った攻撃を検知したものです。

この脆弱性が悪用されると、DocumentRoot外にあるファイルが意図せず閲覧される可能性があるほか、CGIスクリプトが有効な場合、任意のコードが実行される恐れもあります。観測した通信は、2021年10月の観測レポートで紹介したものと同様でした。

Web/メールのマルウェア脅威の観測情報

Webアクセス時におけるマルウェア検出

今回の対象期間において、Webアクセス時に検出したマルウェア種別の割合を図-5に示します。

図-5 Webアクセス時に検出したマルウェア種別の割合(2021年11月)
図-5 Webアクセス時に検出したマルウェア種別の割合(2021年11月)

対象期間中はTrojan.Win32.Agentを最も多く検出し、全体の55.56%を占めていました。当該シグネチャでは悪性と思われるexe形式の実行ファイルが、Webサイトを通じて配布されていることを確認しています。2番目に多く検出したTrojan.JS.Agentは、全体の11.11%を占めており、難読化されたJavaScriptファイルを検出していました。検出したファイルには、外部のJavaScriptファイルを読み込むscriptタグを生成する処理が含まれていました。scriptタグにより読み込まれるJavaScriptファイルは、ユーザのトラッキングを行うスクリプトであることを確認しています。

メール受信時におけるマルウェア検出

対象期間における、メール受信時に検出したマルウェアの割合を図-6に示します。

図-6 メール受信時に検出したマルウェア種別の割合(2021年11月)
図-6 メール受信時に検出したマルウェア種別の割合(2021年11月)

対象期間中に最も多く検出したマルウェアはHoax.HTML.Phishで、全体の32.35%を占めていました。当該シグネチャではHTMLファイルが添付された、運送業者を騙るメールを検出しています。HTMLファイルを開くと情報入力フォームが表示され、アカウント情報を入力すると攻撃者に入力内容が漏洩する恐れがあります。

次点で多かったのはTrojan-PSW.MSIL.Agenslaで、全体の8.33%を占めていました。当該シグネチャでは、情報窃取型マルウェアであるAgent Teslaを圧縮したcab形式やzip形式のファイルを検知しています。これらのメールの件名には、見積依頼や請求書を連想させる文言が使用されていました。

また当月はEmotetをダウンロードするマクロ付きのMicrosoft Word(docm)及びMicrosoft Excel(xlsm)ファイルを検出しています。これらはHEUR:Trojan.Script.Genericなどの名称で検出されていました。

Emotetは、感染端末からの情報窃取や迷惑メール送信、他マルウェアのダウンロードと実行、攻撃インフラとなるボットネットとの通信などの機能を持つマルウェアとして知られています。2021年1月27日にEuropol(欧州刑事警察機構)よりEmotetの攻撃インフラがテイクダウンされたことが発表され、SOCでは1月26日以降、Emotetへの感染を狙ったメールは検知していませんでした。しかし、11月14日頃からEmotetの攻撃活動再開が確認されたという注意喚起がIPAによって出されており、SOCでも攻撃メールを観測しています。

以下に、対象期間においてSOCで検出した、件名が日本語で脅威を含むメールに関する情報を示します。なお、以下は主要なものであり、すべての不審なメールを網羅しているものではない点にご注意ください。

件名例 添付ファイル名例
  • Re: <人名>
  • Fwd:<人名>
  • <ランダムな数字>_17_Nov_2021.xlsm
  • INF_<ランダムな数字>.xlsm
  • SCAN_<ランダムな数字>.xlsm
  • DOC_<ランダムな数字>.xlsm
  • FILE_<ランダムな数字>.xlsm
  • REP_<ランダムな数字>.xlsm
  • Inv JW-3657.docm

これらの件名及び添付ファイル名となっているメールはEmotetの攻撃メールであることを確認しています。件名については、テイクダウン前と同様に返信や転送を装った「RE:」、「Fwd:」を含む件名を確認しています。添付ファイルについて、テイクダウン以前はEmotetのダウンローダにMicrosoft Word 97-2003(doc)形式のファイルが主に使われていましたが、活動再開後はdocm形式やxlsm形式のファイルも使用されていることを確認しています。また、表に示すように特定の命名規則をもつ名称が利用されていることを確認しています。

セキュリティインシデントカレンダー

カテゴリ凡例
セキュリティ事件 脅威情報 脆弱性情報 セキュリティ技術 観測情報 その他
日付 カテゴリ 概要
脆弱性情報

イギリスのケンブリッジ大学コンピュータ研究所は、Unicodeを使う一般的なコンパイラやインタプリタに双方向テキスト制御文字やホモグリフ文字など視覚的に読み取りにくいものを使い、攻撃者が悪用可能となる意図しない制御が実行できてしまう方法を発見したと公表した。

セキュリティ事件

ショッピングセンターチェーンの経営会社は、同社が運営するECサイトの制作・運用委託先が外部から不正アクセスを受け、クレジットカード情報が3,101件流出した可能性があるとのことを公表した。また、会員登録数、ゲスト購入数といった個人情報についても254,207件が流出した可能性があるとのこと。今後、調査結果を踏まえてシステムのセキュリティ対策及び監視体制を強化し、再発防止を図っていくとのこと。

セキュリティ事件

アパレル会社は、同社の公式オンラインショップが第三者による不正アクセスを受け、247,600人分の個人情報が流出したことを公表した。流出が確認された情報は、氏名、電話番号、住所、生年月日、性別及びメールアドレスとのこと。なお、クレジットカード情報やパスワード情報は含まれておらず、公表時点では二次被害も確認されていないとのこと。

セキュリティ事件

研究開発法人は、同法人関係者が利用する学習管理システムに対して不正アクセスがあり、サービス利用者約1万4000件の個人情報が流出した可能性が高いことを公表した。流出した恐れのある情報は、ID番号、姓、名、ミドルネーム及びメールアドレスとのこと。同法人によると再発防止策として、当該システムおよび運用体制などについてセキュリティ対策強化を指示するとのこと。

セキュリティ事件

海外の金融サービス企業は、500万人分のメールアドレスのリスト及び200万人分の顧客名が窃取され、攻撃者から身代金の支払いを要求されたことを公表した。流出した情報に口座番号やデビットカード番号などは含まれず、顧客に金銭的損失はないとしている。

脅威情報

シックス・アパート株式会社は、同社が提供するMovable Typeに存在する脆弱性を狙った悪質な攻撃が観測されており、見知らぬ PHPファイルなどを設置されたり .htaccessファイルを書き換えられてサイトの閲覧に影響が出たりするなどの被害が確認されていることを公表した。同脆弱性に対するセキュリティアップデート情報については、2021年10月の観測レポートに掲載している。

セキュリティ事件

広告代理店は、外部からの不正アクセスによりホームページが改ざんされたことを公表した。旧ホームページを構成していたMovable Typeの脆弱性が利用され、ホームページのインデックスファイルなどが改ざんされたとのこと。

その他

IIJは、パスワード付きZIPファイルをメールに添付して送信し、パスワードを記載したメールを別送する、いわゆる「PPAP」の運用を変更すると公表した。今後はパスワード付きZIPファイルをフィルタにより削除する方針としている。

その他

JPCERT/CCは、Webメールサービスのアカウント情報の詐取を目的としたフィッシングの被害に関する報告が増加していると公表した [1]。一般的なフィッシングと同様にメール本文中のリンクの安易なクリックを避けることや正しいドメイン名の確認及びブックマークからの接続を推奨している。

セキュリティ事件

アメリカのドメイン登録事業者は、マネージドホスティングシステムにおいて不正アクセスを受け最大120万人の顧客情報が流失したことを公表した。同社は対応として、パスワードリセットや新しい証明書の発行、インストールなどを行っている。

セキュリティ事件

電機メーカは、外部から不正アクセスを受け、ファイルサーバのデータの一部が流出したことを公表した。流出したデータに顧客個人情報や社会インフラに関連する機密情報が含まれていないかなどを調査中とのこと。

セキュリティ事件

キャラクターの著作権管理など手掛ける企業は、同社が運営するオンラインストアにおいて第三者による決算アプリケーションの改ざんによる不正アクセスが行われ、顧客のクレジットカード情報17,828件が流出した可能性があることを公表した。流出した情報には、クレジットカード情報のほかにオンラインストアのログインID、パスワードが含まれるとのこと。

セキュリティ事件

食品メーカは、同社が運営するオンラインショップの制作、運用委託先の企業のシステムにおいて、外部からの不正アクセスにより顧客のクレジットカード情報1,544名分及びECサイトにて会員登録またはゲスト購入した16,131名分の個人情報が流出したことを公表した。

ソフトウェアリリース情報

日付 ソフトウェア 概要
Android

Google社は、同社が提供するAndroidにおける11月の月例セキュリティ情報を公開した。

Chrome OS 94.0.4606.114

Google社は、Chrome OSに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Mozilla複数製品

Mozillaは、11月2日から3日にかけて、同社が提供する複数製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

FortiClient(Windows)
FortiWLM
FortiWeb
FortiSIEM

Fortinet社は、同社が提供する複数製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Cisco複数製品

Cisco Systems社は、同社が提供する複数製品の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Samba 4.13.14、4.14.10、4.15.2

Samba開発チームは、Sambaに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Adobe複数製品

Adobe社は、同社が提供する複数の製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Citrix複数製品

Citrix Systems社は、同社が提供する複数の製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

SAP複数製品

SAP社は、同社が提供する複数製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Microsoft製品複数

Microsoft社は、同社が提供する複数のソフトウェアに対する11月の月例セキュリティ更新プログラムを公開した。

Palo Alto Networks複数製品

Palo Alto Networks社は、同社が提供する複数製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Apple iCloud for Windows 13

Apple社は、同社が提供するiCloud for Windows 13に存在する複数の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

WordPress 5.8.2

WordPress Foundationは、同社が提供するWordPressに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

VMware Tanze Application Service

VMware社は、同社が提供するVMware Tanze Application Serviceの脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

PostgreSQL 複数バージョン

PostgreSQL開発チームは、PostgreSQLに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Chrome OS 94.0.4606.124

Google社は、Chrome OSに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Chrome 96.0.4664.45

Google社は、Chromeに存在する複数の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Windows 10 November 2021 Update

Microsoft社は、同社が提供するWindows 10において複数の新機能が追加された最新バージョンであるWindows 10 November 2021 Update(21H2)を公開した。

Drupal 8.9.20、9.1.14、9.2.9

Drupal社は、同社が提供する複数製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

PHP 7.3.33、7.4.26、8.0.13

PHP開発チームは、11月18日から19日にかけて、PHPに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

ウイルスバスター for Mac

トレンドマイクロ社は、同社が提供するウイルスバスター for Macに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

ヤマハ複数製品

ヤマハ社は、同社が提供する複数製品の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Kaspersky複数製品

Kaspersky社は、同社が提供する複数製品の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

VMware vCenter Server

VMware Cloud Foundation

VMware社は、同社が提供するVMware vCenter Server及びVMware Cloud Foundationの脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

QNAP VS Series NVR

QNAP社は、同社が提供する複数製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

ELECOM複数製品

ELECOM社は、同社が提供する複数製品の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Chrome OS 96.0.4664.77

Google社は、Chrome OSに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

おわりに

この観測レポートは、いまインターネットで起こっている攻撃などの状況をまとめて提示することで、読者の皆様がより良い対策を実施できることを目的としてまとめて公開しています。一部の攻撃について、特にお客様を特定できてしまうような情報については除外してまとめていますが、本レポートに記載の内容は多くのお客様における傾向から作成しています。対策の推進にご活用いただければ幸いです。

脚注