wizSafe Security Signal 2022年1月 観測レポート


2022年1月観測レポートサマリ

本レポートでは、2022年1月中に発生した観測情報と事案についてまとめています。

当月は1日あたりのDDoS攻撃件数に大きな変化はなく、最大規模を観測した攻撃は主にLDAPプロトコルを用いたUDP Amplificationで通信量は先月から減少しました。この攻撃は最長時間を観測した攻撃でもありますが、継続時間は先月を下回りました。

IPS/IDSにおいて検出したインターネットからの攻撃について、当月はD-Link社製ルータの脆弱性を狙った攻撃が最も多く観測されています。また、当月もLog4j 2の脆弱性(CVE-2021-44228)を狙った攻撃が観測されています。

Webサイト閲覧時における検出では、他のサイトへリダイレクトを実行するJavaScriptが最も多く観測されています。メールでは金銭を求めるメール、RedLineやEmotetへの感染を狙ったメールを観測しています。

DDoS攻撃の観測情報

本項では、IIJマネージドセキュリティサービスやバックボーンなどでIIJが対処したDDoS攻撃のうち、IIJ DDoSプロテクションサービスで検出した当月中の攻撃を取りまとめました。

攻撃の検出件数

以下に今回の対象期間で検出した、DDoS攻撃の検出件数を示します。

図-1 DDoS攻撃の検出件数(2022年1月)
図-1 DDoS攻撃の検出件数(2022年1月)

今回の対象期間で検出したDDoS攻撃の総攻撃検出件数は541件であり、1日あたりの平均件数は17.45件でした。期間中に観測された最も規模の大きな攻撃では、最大で約232万ppsのパケットによって21.15Gbpsの通信が発生しました。この攻撃は主にLDAPプロトコルを用いたUDP Amplificationでした。当月最も長く継続した攻撃もこの通信であり、およそ20分にわたって攻撃が継続しました。

IIJマネージドセキュリティサービスの観測情報

以下に、今回の対象期間に検出した1サイト当たりの攻撃検出件数(図-2)と攻撃種別トップ10の割合(図-3)を示します。

図-2 1サイト当たりの攻撃検出件数(2022年1月)
図-2 1サイト当たりの攻撃検出件数(2022年1月)
図-3 攻撃種別トップ10の割合(2022年1月)
図-3 攻撃種別トップ10の割合(2022年1月)

対象期間内に最も多く検出したのは、D-Link SoapAction Header Command Injection Vulnerability (CVE-2015-2051)で、全体の10.15%を占めていました。当該シグネチャでは、D-Link社製ルータの脆弱性を狙った攻撃を検出しています。本脆弱性は特定のD-Link社製ルータで動作するHNAP(Home Network Administration Protocol)のSOAPAction-headerを用いて任意のコードを実行することが可能なものです。当該脆弱性を利用した攻撃として、SOCでは悪意のあるスクリプトのダウンロード及び実行を試みる通信を観測しています。図-4は観測した通信の一部です。

図-4 D-Linkの脆弱性を悪用する通信
図-4 D-Linkの脆弱性を悪用する通信

図-4の内容は、wgetコマンドを使用して外部のサーバからIoTマルウェアであるMiraiの亜種をダウンロードし、実行権限の付与とファイルの実行を試みるものでした。

次点はNetis Netcore Router Default Credential Remote Code Executionで、全体の7.04%を占めていました。当該シグネチャで検知される通信は、Netis社及びNetcore社製ルータの脆弱性を狙った攻撃であり、当該脆弱性が悪用されると任意のコードが実行される恐れがあります。検知した通信の内容は外部のマルウェア配布サーバからスクリプトをダウンロードし実行するものでした。ダウンロードが試行されたマルウェアはGafgytの亜種であることを確認しています。

また、前月と比較して検出数が減少しており、トップ10には含まれていませんが、今月もApache Log4j 2 Remote Code Execution Vulnerability (CVE-2021-44228)を観測しています。当該シグネチャでは、Java用のロギングパッケージであるApache Log4j 2の脆弱性(CVE-2021-44228)を利用した攻撃を検出しており、この脆弱性が悪用されると、任意のコードが実行される恐れがあります。観測した通信は、2021年12月の観測レポートで紹介したものと同様でした。

Web/メールのマルウェア脅威の観測情報

当月より一部のデータ集計単位を新しい方式に対応・変更しております。データの見え方に変化がある場合がありますが、分析に使用しているデータソースにつきましては変更ありません。

Webアクセス時におけるマルウェア検出

今回の対象期間において、Webアクセス時に検出したマルウェア種別の割合を図-5に示します。

図-5 Webアクセス時に検出したマルウェア種別の割合(2022年1月)
図-5 Webアクセス時に検出したマルウェア種別の割合(2022年1月)

対象期間中はHEUR:Trojan.Script.Genericを最も多く検出し、全体の67.10%を占めていました。当該シグネチャでは、Webブラウザが表示しているURLが格納されている変数であるwindow.location.hrefの値を変更することで、リダイレクトを実行するJavaScriptファイルを検出しています。本記事の執筆時点ではwindow.location.hrefの値に設定されるURLを取得できませんでしたが、この仕組みを悪用することで攻撃者はクライアントを任意のURLへリダイレクトさせることが可能となります。

また、Emotetを配布することを目的としたサイトを複数確認しています。これらのサイトは検知数が少なかったため図-5には含まれていませんが、HEUR:Trojan.MSOffice.Emotetのシグネチャで検出していました。

メール受信時におけるマルウェア検出

対象期間における、メール受信時に検出したマルウェアの割合を図-6に示します。

図-6 メール受信時に検出したマルウェア種別の割合(2022年1月)
図-6 メール受信時に検出したマルウェア種別の割合(2022年1月)

対象期間中に最も多く検出したマルウェアはHEUR:Hoax.Script.Scaremailで、全体の72.28%を占めていました。当該シグネチャでは、”Don’t forget to pay the tax within 2 days”という文言を含む、金銭を要求する趣旨の件名を多数観測しています。これらの件名が添えられたメールは、ランダムに生成されたドメインから送信されてくる傾向があります。

次点で多かったのはHEUR:Trojan.Script.Genericで、全体の5.16%を占めていました。当該シグネチャでは、Windowsに標準で含まれるcertutil.exeやpcalua.exeを組み合わせてファイルをダウンロード及び実行するコードを含むJavaScriptファイルを検出しています。ここで実行されるファイルはRedLineと呼ばれるマルウェアの一種で、コンピュータに保存された非代替性トークン(NFT)、ブラウザ内の個人情報、動作環境に関する情報を窃取する特徴があります。RedLineの感染経路はメールに限らず正規のソフトウェアを装ってWebサイトから配布されることもあります。

以下に、対象期間においてSOCで検出した、件名が日本語で脅威を含むメールに関する情報を示します。なお、以下は情報の一部であり、すべての脅威メールを網羅しているものではない点にご注意ください。

件名 添付ファイル
  • Re: <人名>@<会社・部署名>
  • <人名> 様
  • RE: <会社名>
  • Fwd:<人名>
  • Forms.xls
  • report <年月日>.xls
  • PO <日付>.xls

前月に引き続き当月もEmotetに関連した脅威メールを多く観測しています。これらの件名及び添付ファイル名となっているメールはEmotetの攻撃メールであることを確認しています。

セキュリティインシデントカレンダー

カテゴリ凡例
セキュリティ事件 脅威情報 脆弱性情報 セキュリティ技術 観測情報 その他
日付 カテゴリ 概要
セキュリティ事件

システム会社は、2021年12月31日未明にランサムウェアに感染したことを公表した。今回の攻撃によって、顧客取引情報などのデータが攻撃者に窃取された可能性があるとのこと。

脆弱性情報

SentinelLabsは、KCodesが提供するNetUSBカーネルモジュールの脆弱性(CVE-2021-45608)を発見したことを公表した。NetUSBは、USB接続の周辺機器をネットワークを経由して利用するソフトウェアであり、この脆弱性が悪用されると、攻撃者によってリモートでコード実行が行われる危険性がある。NetUSBは多くの製品に採用されており、数百万台のデバイスにこの脆弱性が存在しているとのこと。

セキュリティ事件

楽器販売店は、同社運営のWebサーバが不正アクセスを受け、会員情報の一部が外部に漏えいした可能性があることを公表した。Webサーバの脆弱性を突いたSQLインジェクション攻撃が原因とのこと。

その他

JPCERT/CCは、侵入型ランサムウェア攻撃の被害に遭った場合の対応ポイントや留意点などをFAQ形式で公開した [1]。

セキュリティ事件

コンサルタント会社は、第三者による不正アクセスにより、社内のストレージに保管されていた顧客情報が漏えいしたと公表した。漏えいした情報は、同社の研修及びコンサルティングを実施した顧客担当者の情報が約1,000件、研修受講者の情報が約19,000件とのこと。

1月14日(金)

セキュリティ事件

システムインテグレーション事業会社は、同社のビジネス文書が保存されたハードディスクがフリーマーケットへ販売されており、ハードディスクの購入者へ情報が流出したことを公表した。同社の元社員が私物ハードディスクへ社内ビジネス文書を保存し、データ消去が不完全な状態でハードディスクが売却されたとのこと。同社によりハードディスクは回収されており、元社員及びハードディスク購入者の手元にあった情報は第三者へ渡っておらず、全て破棄されたことを確認したとのこと。

セキュリティ事件

人道支援機関は、スイスにある請負業者のサーバがサイバー攻撃を受け、515,000人以上の個人データが漏えいしたと公表した。

1月19日(土)

その他

Microsoft社は、Microsoft Excel(Build 16.0.14427.10000)からExcel 4.0 (XLM)マクロ機能がデフォルトで無効に設定されていることを発表した。

セキュリティ事件

スキンケア会社は、同社が運営しているサイトにて、第三者による不正アクセスにより顧客のクレジットカード情報が流出した可能性があることを公表した。流出した可能性があるクレジットカード情報は46,702件とのこと。

脆弱性情報

Qualys社は、Unix及びLinux系OSで多く利用されているアプリケーションフレームワークであるPolkitに含まれるpkexecにおいて、ローカルでの特権昇格の脆弱性(CVE-2021-4034)が存在することを公表した。同脆弱性は「PwnKit」と呼ばれており、pkexecが初回リリースされた12年前から存在していたとしている。同脆弱性を悪用することにより、特権が無いローカルユーザがroot権限へ昇格することが可能とのこと。主要なLinuxディストリビュータは同脆弱性が修正されたバージョンを公開しており、早急なアップデートが推奨される。

1月27日(木)

その他

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2021年に発生した社会的に影響が大きかったと考えられる情報セキュリティの事案から10大脅威を選出し、ランキング形式で公表した。

セキュリティ事件

学習塾経営会社は、同社運営のWebサーバが不正アクセスを受け、メールアドレスが流出した可能性があることを公表した。流出した件数は最大280,106件であり、同社Webサーバの脆弱性を狙ったSQLインジェクション攻撃が原因とのこと。

ソフトウェアリリース情報

日付 ソフトウェア 概要
Chrome 97.0.4692.71

Google社は、Google Chromeに存在する複数の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

VMware社複数製品

VMware社は、同社が提供するVMware Workstation、VMware Fusion及びVMware ESXiの脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

WordPress 5.8.3

WordPress Foundationは、WordPressに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

GitLab 14.4.5、14.5.3、14.6.2

GitLab Inc. は、GitLab Community Edition(CE)及びGitLab Enterprise Edition(EE)に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Adobe社複数製品

Adobe社は、同社が提供する複数製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Firefox 96
Firefox ESR 91.5
Thunderbird 91.5

Mozilla社は、Firefox、Firefox ESR、及びThunderbirdに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

SAP社複数製品

SAP社は、同社が提供する複数製品に存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Citrix Workspace App
Citrix Hypervisor

Citrix Systems社は、1月11日から12日にかけて、Citrix Workspace App及びCitrix Hypervisorに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Samba 4.13.16

Samba開発チームは、Sambaに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Microsoft社複数製品

Microsoft社は、同社が提供する複数のソフトウェアに対する1月の月例セキュリティ更新プログラムを公開した。

Juniper社複数製品

Juniper社は、同社が提供する複数製品に存在する複数の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

トレンドマイクロ社複数製品

トレンドマイクロ社は、同社が提供する複数製品の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

iOS 15.2.1
iPadOS 15.2.1

Apple社は、同社が提供するiOS及びiPadOSに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

ManageEngine Desktop Central
ManageEngine Desktop Central MSP

Zoho社は、同社が提供するManageEngine Desktop Centralに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

McAfee Agent 5.7.5

McAfee社は、同社が提供するWindows用McAfee Agentに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Oracle社複数製品

Oracle社は、同社が提供する複数の製品に対する定期更新プログラムを公開した。

Chrome 97.0.4692.99

Google社は、Google Chromeに存在する複数の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Drupal 9.3.3、9.2.11、7.86

Drupal社は、同社が提供するDrupalに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Trend Micro Deep Security

Trend Micro Cloud One Workload Security

トレンドマイクロ社は、Trend Micro Deep Security及びTrend Micro Cloud One Workload SecurityのLinux版Agentに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

  • 「アラート/アドバイザリ:Deep Security および Cloud One Workload Security の Linux版Agentにおける ディレクトリトラバーサルおよびコードインジェクションの脆弱性について」
    https://success.trendmicro.com/jp/solution/000290304
Cisco社複数製品

Cisco Systems社は、同社が提供する複数製品の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Apache Tomcat 8.5.75、9.0.58、10.0.16、10.1.0-M10

Apache Software Foundationは、Apache Tomcatに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

F5 Networks社複数製品

F5 Networks社は、同社が提供する複数製品に存在する複数の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

トレンドマイクロ社複数製品

トレンドマイクロ社は、同社が提供する複数製品の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Apple社複数製品

Apple社は、同社が提供する複数製品の脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

Samba 4.13.17、4.14.12、4.15.5

Samba開発チームは、Sambaに存在する脆弱性に対するセキュリティアップデートを公開した。

おわりに

この観測レポートは、いまインターネットで起こっている攻撃などの状況をまとめて提示することで、読者の皆様がより良い対策を実施できることを目的としてまとめて公開しています。一部の攻撃について、特にお客様を特定できてしまうような情報については除外してまとめていますが、本レポートに記載の内容は多くのお客様における傾向から作成しています。対策の推進にご活用いただければ幸いです。

脚注